COFFEE TALK
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鰤岡 力也|MOBLEY WORKS

パドラーズと関連のある人、お店を紹介するWEB連載企画。
第一回はパドラーズコーヒーの内装を手がけてくださったMOBLEY WORKSの鰤岡さんです。
パドラーズの内装について、GWに控える展示について、お話をうかがいました。


– 簡単な自己紹介お願いします。

名前は鰤岡で、屋号はMOBLEY WORKS。木材をベースに物づくりしてる人って言ったらいいのかな、ウッドワーカーです。

– この企画を始めるにあたって、やっぱり1人目はパドラーズ全員一致で鰤岡さんにインタビューしようってことになったんです。

ポートランド一緒に行ったからね、時間が無いなかね。でもあれ行ってよかったよね。

– あ~あれはほんと行って良かったです。

なにか一緒に作るんだったら気持ちの共有は大事だよね。
仕事ってお金目的でもあるけど、でもやっぱりお金では買えないなにかを求めたい時ってあるでしょ。お金目的の仕事をしている人もいっぱいいるけど、おれはお金目的だけだったら仕事できないかなって思ってるから、ああいうの求めちゃうよね。

– パドラーズつくってみて、一番思い入れがある箇所どこでしたか?

やっぱりカウンターかな。あのアールのところは結構気合い入れて型もちゃんと作ったり、あれ出来た時は気持ち良かったね。
あとはスツールかな!あのスツールが長く売れ続けるとかあの時は思わなかったからさ。

– パドラーズの内装をして、なにか変わりました?

変わったよね、松島くんが宣伝してくれるからね(笑)。

– ははは(笑)そうだ、GWにパドラーズで開催するイベントのこと教えて下さい。

どちらかというとお金目的で仕事してる訳じゃないし、自分が好きなものを作れれば良いかなって思ってたから、カタログを作るとか定番商品をたくさん作るとかあんまり考えてなかったんだよね。でも今回は何年かやってきて、気に入ったものを出来たし、松島くんの後ろ押しもあったしチームも組まれちゃったしね(笑)

– かなり押しちゃいましたね(笑)実際、意気込みとかどうですか?

自分も気に入っているから売れてくれるのは嬉しいんだけど、果たしてそれを作りきれるかっていう不安の方もあるよね(笑)外注に出来ないし、オーダーきすぎちゃったらっていう前向きな不安ね(笑)

– 僕はめっちゃオーダーくると思ってますよ。今回の一番見てほしい作品はどれですか?

いままで忙しいっていうのを理由にしてやりたい事もやってなかったんだけど、今回はやってみたかった事をやった家具もあって。「ボーガーズハウスシリーズ」っていうシリーズだね。

– ボーガーってなんですか?

ジェイソン・ボーガーっていうフライフィッシャーマンがいて、『リバーランズスルーイット』のなかでブラット・ピットの後ろ姿の※キャスティングをしてる人がそのジェイソン・ボーガーっていう人でさ、キャスティングが超うまいんだよ。その人の家にあるっていうことを想定したから「ボーガーズハウスシリーズ」なの。(笑)
※釣り用語でフライラインに力を伝えてフライを遠くへ運ぶ技術のこと。

– マニアックですね(笑)

他の家具も川の名前とかからで、スツールはオレゴンで有名な「デシューツリバー」から、椅子の「デッティー」はデッティーファミリーていうフライを撒く仕事を代々受け継ぐ人たちからとったよ。
彼らはフライフィッシングの聖地、ニューヨークのキャッツキル山地の近くに住む由緒正しいフライタイヤーなんだよ。

– 鰤岡さんが考える「クラフトマンシップ」ってなんですか?

若い時は「オリジナリティ」ってなんだろうって考えて、自分のオリジナルを作りたくていろんな資料とか見たりするじゃん。そうすると世の中には良いものいっぱいあるから、そっちに心が流されちゃう気がしたし、それは結局自分のオリジナリティじゃないなって思って。だから結局は自分との戦いでさ、自分とはなにものなのかを常に考えてるね。どういう立ち位置なのかとか、どうゆう物づくりが自分らしいのかとかね。

– その自分への問いに対しての答えはどうですか?

人から評価をされるものを作るっていうことより、自分が納得するものを作ること。それが評価されれば売れるし、されなければ売れないしっていう、ただそれだけなんじゃないかなって思ってるんだよね。
前はさ、社員もバイトもいて下請けの仕事をものすごい勢いで回しててさ。そうするとお金はたくさん入ってくるけど、どっか1割くらい自分の中で納得できてない心があるわけ。「ほんとは自分が作りたいもの作りたいんだけどな」みたいなね。けどその1割の葛藤を満足させるには他の9割を切らなきゃいけないじゃん。それで10年間くらいずっともやもやした気持ちでいたんだけど、そんな時に父親が亡くなっちゃったんだよね、本当に突然だったよ。その時になにかが吹っ切れてさ、いつなにが起きるかわからないし好きな事しなきゃだめだなって思ったんだ。それからその9割あった下請けの仕事を徐々に減らしてって、いまは全くやってないよ。ちょうどその頃から自分の好きなものを作り始めて、※ローカル作ったり、パドラーズから話しが来たりっていうタイミングだったんだよね。
※鰤岡さんが内装を手掛けた、たまプラーザにある眼鏡屋さん。

– お父さんのことがターニングポイントだったんですね。

そうだね、心を決めたというか腹をくくったね。この家も父親に見せたかったけど、もし亡くなってなかったらこの家は出来てなかったと思ったりもするんだよね。悪いことがあったら次は良いことがあるし、ピンチはチャンスだっていつも思ってるよ。パドラーズも以外とピンチだったしね。予算少ないし、広いしさ(笑)でもそこからドアノブ買えないからって考えて、旋盤で引いて作ったら意外と気に入ったりとかね。そういうお金のない現場って意外と好きでさ(笑)考えなきゃいけないから、良いものが生まれるんだよね。

– 細かい注文ばかりですみませんでした(笑)

作る人は作りやすいものを作っちゃうからね。お客さんからの要求に、やったこと無いことをやってみるってことだったり、自分と向き合って挑戦してみることが、作る人たちは必要だと思うんだ。

– 僕も根拠は無かったんですが、お店作ったら届く人には届くだろうと思ってました。

お店はやっぱり愛着が有るか無いか、そこに立ってる店主がどんだけお店を好きか嫌いかで見え方が変わってるよね。安い買い物じゃないから何十年も使って欲しいし、ずっと飽きのこない店づくりだけどエッジが効いてるね。そういう物づくりを目指してるよ。

– パドラーズが出来て2年経ちますが、いま見てみてどうですか?

意外と良い店できたよね(笑)作ってる時はどんな空間になるとか全然想像つかなかったよね。いまは無垢の木が良い色だしてきたりさ、あと10年経っても良いお店なんじゃないかなって思ってるよ。

– GWのイベント、楽しみですね。

関わってくれた※2人には頭が上がらないよ。集大成だね、40歳のいい思い出になったよ。
※MOBLEY WORKSのカタログ製作に携わる写真家の平野太呂さんと、イラストレーター/デザイナーの平野暢達さん

– まだ本番はこれからじゃないですか(笑)

はははは、スタッフ募集しなきゃな!(笑)